1. STOとは?30秒で分かる結論
STOは Safe Torque Off の略で、日本語では一般に「安全トルク遮断」と呼ばれます。 インバータやサーボドライブが、モータへトルクや推力を発生させるための駆動エネルギを安全側で遮断する機能です。
三菱電機FAでは、STOを外部機器からの入力に基づいてモータ駆動エネルギを電子的に遮断する機能として説明し、 IEC/EN 60204-1の停止カテゴリ0に相当するとしています。
いちばん大事なポイント
STOは「決められた減速時間でモータを止める機能」ではありません。 トルクを出せない状態にする機能なので、回転中にSTOが働いた場合の停止距離や停止時間は、慣性・負荷・機械構造・機種固有の停止挙動などに左右されます。
先輩STOは「モータを減速させる命令」ではなく、「トルクを作るエネルギを安全側で遮断する機能」と覚えると分かりやすいよ。
新人STOが入った瞬間に、その場でピタッと止まるとは限らないんですね。
メーカー公式資料を確認して作成しています
この記事は、STOの一般原理について三菱電機FA・オムロンFAなどの公式情報を確認して整理しています。 型式固有の端子名、配線、復帰条件、安全性能レベル、アラームについては、実際に使用する機器の取扱説明書・機能安全マニュアルを優先してください。
公式資料確認日:2026年9月25日
2. STOが実際に遮断するもの
STOが対象にするのは、モータへトルクや推力を発生させるための駆動エネルギです。 制御回路や表示部まで必ず電源OFFになるわけではないため、ドライブの表示が点灯していても、STO状態では運転できない機種があります。
ここは「電源が入っている=モータを動かせる」と考えると混乱しやすいポイントです。 STOはドライブ内部の安全機能として、トルクを発生できない状態を作ります。
STOは感電防止用の電源遮断ではありません
STOを有効にしても、ドライブやモータが電源から電気的に切り離されたことにはなりません。 保守・点検で電気的な安全確保が必要な場合は、設備の安全手順とメーカー資料に従い、適切な電源隔離を行う必要があります。
3. 普通の停止信号とSTOは何が違う?
通常の停止は、PLCや操作スイッチからドライブへ停止指令を出し、運転制御の中でモータを止める考え方です。 一方のSTOは、危険源となるトルクを発生できない状態にするための安全機能です。
| 項目 | 通常の停止 | STO |
|---|---|---|
| 主な役割 | 運転制御として止める | トルク生成エネルギを安全側で遮断する |
| 停止過程 | 制御プログラムやドライブ設定に従って減速できる | STOそのものは減速過程を制御しない |
| 安全機能としての位置づけ | 通常制御だけでは安全機能の代わりにならない | 機能安全設計の一部として使用する |
| 機種確認 | 運転仕様・パラメータを確認 | 機能安全マニュアル・安全入力仕様を確認 |
「止まった」と「安全にトルクを出せない」は別の確認です
通常停止でモータが停止していても、それだけでSTO状態とは限りません。 逆にSTOが働いていても、慣性などで機械がすぐ完全停止するとは限りません。
4. STOとSS1・ブレーキの違い
STOを理解するときは、SS1(Safe Stop 1)との違いを押さえると分かりやすくなります。 三菱電機FAの説明では、SS1はまず減速を開始し、停止確認のための条件を満たした後にSTOへ移行する安全機能です。
| 機能 | 考え方 | ポイント |
|---|---|---|
| STO | トルク生成エネルギを遮断 | 停止過程そのものは制御しない |
| SS1 | 減速してからSTOへ移行 | 回転エネルギが大きい機械などで使い分ける |
| 機械ブレーキ | 機械的に保持・制動 | 垂直軸や落下防止など、機械側の要求に応じて必要 |
STOだけで十分かは機械ごとに決まります
慣性で長く動く軸、重力で動く垂直軸、停止後の保持が必要な機械などでは、STOだけでは安全要求を満たせない場合があります。 必要な安全機能はリスクアセスメントと機械仕様から決めます。
5. 非常停止・安全ドア・安全リレーとSTOの関係
非常停止スイッチや安全ドアスイッチは「危険を検知・要求する側」、STOは「ドライブ側でトルクを出せなくする安全機能」と考えると整理しやすくなります。
実際の設備では、安全リレーや安全PLCなどが安全入力を監視し、その安全出力を使ってドライブのSTO機能を動作させる構成があります。 ただし、接続方式や必要なチャンネル数、診断、リセット方法は機種・安全設計によって異なります。
非常停止
危険時に停止を要求するための操作機器です。STOそのものと同一ではありません。
安全ドア
ガードの開閉状態を安全系へ伝え、危険源を止める判断に使います。
安全リレー・安全PLC
安全入力を監視し、要求された安全機能を実行するための安全出力を制御します。
STO
ドライブ側でトルク生成エネルギを遮断し、意図しない駆動を防ぐ役割を担います。
6. STOで誤解しやすい3つのポイント
① STOを入れれば必ず瞬時停止するわけではない
STOは減速指令ではありません。回転中の機械がどのように停止するかは、機械の慣性、負荷、ブレーキ、ドライブ固有の挙動などで変わります。
② STOは電源OFF・電気的隔離ではない
STO状態でも主回路や制御回路に電圧が残る構成があります。点検・保守のための電源隔離とSTOは分けて考えます。
③ STOだけで非常停止システム全体が完成するわけではない
非常停止、安全ドア、ライトカーテン、安全リレー、安全PLC、STOなどはそれぞれ役割が違います。 設備全体として必要な安全機能と性能を満たすように組み合わせます。
7. 「電源は入るのに動かない」時の考え方
ドライブの表示は点灯しているのに運転できない場合、STOや安全回路が関係していることがあります。 ただし、安全機能の端子を短絡したり、ジャンパーで無効化して原因確認する方法は避けます。
安全装置の状態
非常停止、安全ドアなど、安全要求が残っていないかを設備の表示・手順で確認します。
安全リレー・安全PLCの診断
安全系に異常表示や未復帰状態がないか、メーカーの診断手順に従って確認します。
ドライブ側の診断表示
STO関連の状態表示やアラームがある場合は、対象機種のマニュアルで意味を確認します。
正式な復帰手順
安全確認、リセット、再起動の順序は設備仕様に従います。機種ごとの操作を推測で行わないことが重要です。
安全回路をバイパスして原因確認しない
STOや安全入力を不用意に短絡・ジャンパーして運転可能にする行為は、安全機能を失わせるおそれがあります。 復旧は設備図面、メーカー資料、社内手順に基づき、適切な資格・権限を持つ担当者が行ってください。
8. 設計・改造・保守で押さえる注意点
- 機種固有仕様を一般化しない:STO入力名、論理、チャンネル数、復帰条件、診断方法はメーカー・シリーズごとに確認します。
- PL / SIL / Categoryはシステム全体で判断:ドライブ単体の対応値だけで設備全体の安全性能を決めません。
- 停止時間・停止距離を確認:STO単独で危険が残る場合は、SS1や機械ブレーキなど必要な方策を検討します。
- 電気的隔離と混同しない:保守作業では設備の電源遮断・ロックアウト等、別の安全手順が必要になる場合があります。
- リスクアセスメントを優先:安全機能は「STOがあるから大丈夫」ではなく、機械の危険源から必要機能を決めます。
STOの安全性能は機種と構成で変わります
対応するPL、SIL、Categoryや必要な外部機器は、ドライブのシリーズ・安全オプション・配線・安全コントローラ構成によって異なります。 設計時は対象機種の機能安全マニュアルを確認してください。
9. まとめ
STOは、インバータやサーボドライブがモータへトルクや推力を発生させるための駆動エネルギを安全側で遮断する機能です。 通常の停止信号、SS1、機械ブレーキ、非常停止、電源遮断とはそれぞれ役割が異なります。
- STO = Safe Torque Off(安全トルク遮断)
- STOは停止カテゴリ0に相当する安全機能
- STOそのものは減速過程を制御しない
- SS1は減速してからSTOへ移行する安全機能
- STOは感電防止用の電源遮断ではない
- 必要な安全機能は機械のリスクアセスメントと公式資料から決める
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